So-net無料ブログ作成
小さなお話 ブログトップ
前の10件 | -

親友 [小さなお話]

何で教えてくれなかったのかって?
親友だろってか?

君のそういうとこが嫌なんだ
僕が君に何でも話すなんて
思わないで欲しい

君は、僕のことなら
何でも知っていると
思ってるけど
何にもわかっちゃいない

だって。。。
実は、僕は前から
君が大嫌いなんだ

えっ、どれほど嫌いかって?

そうだなぁ
今すぐ、隕石が君の頭に落ちてきて
死んでくれないかなぁと思うくらい

。。。かな

おいおい
ちゃんと聞いてるか?
こんなこと言いたくて
言ってるわけじゃないんだ
君が聞きたがったんだろ
居眠りなんかするなよ

。。。っで

この際だから、言っておくけど
君は僕のことを
占い師だって思ってるよね
でも、僕は占いなんかできない
ちょっと特殊な能力があるだけなんだ

言ったことが現実になるって能力さ
まぁ、10回言ったうちの
1回か2回くらいのもんだけどね


……。

だから、寝るなって言ってるだろ

あれ?
寝てるんじゃないのか?

おぃ…

あっ、死んでる

そっか、隕石に当たったのか…

ほらほら、言わんこっちゃない
君がいらんことを聞くから
本当になっちゃったじゃないか…

apple300.jpg

にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ
nice!(3)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

八日目の。。。あっ違った。。。十三日目の朝(笑) [小さなお話]

 ☆七日目の朝☆

今日で僕の命が終わる
僕は、精一杯生きたか?
やり残したことはないのか?
必死に自分に問いかけるけど
焦るばかりで答えは見つからない
でも、何か足りない気がして
それを探して日が暮れる

生きるってそんなもんだ

満足のいく生き方なんて
きっとどこにもないのだろう
悔いも残るが
どちらにしたって
今日ですべてが終わりになる

みんなどうもありがとう
なにはともあれ
楽しかったよ。。。
この世ってやつは


 ☆八日目の朝☆

昨日で終わったはずなのに
僕は今日も生きている
おかしいなぁ。。。
でも、これってラッキー
せっかく生きているのだから
とにかく美味しいものを食べよう
いつもより少し早く飛んで
流れる風と戯れよう

生きるってこういうものだ

何が起こるかわからない
ある日突然。。。の死もあれば
予想外の生もある
どちらにしたって
思いもよらぬ時間が出来た

神様どうもありがとう
なにはともあれ
楽しむよ。。。
この世ってやつを


 ☆九日目の朝☆

今日も僕は生きている
盆と正月が一度にやってきた
そんな気分だ
さて今日は何をしようか。。。
なんだっていい
自分のしたいことだけしよう
奇跡はそうそう続かない
今日が本当の最後だろうから
一番好きなあの場所で
一番好きなあの夕焼けを
見てから逝くのも悪くない

生きるって素敵なことだ

地球よどうもありがとう
なにはともあれ
楽しんでやれ。。。
この世ってやつを


 ☆十日目の朝☆

あれれ。。。まだ、生きてるの?
なんでだ?
僕は不死身になったのか?
運命ってきまぐれだから
そんなこともあるかもしれない
だったらとっても嬉しいけれど
それならそれで
色々考えなきゃならないことがある
これからの生き方について!
だって。。。
いつまでも遊んで暮らせるわけがない
そのくらいは
僕にだってわかるよ

生きるって厳しいものだ

運命よどうもありがとう
なにはともあれ
楽しみながら生きてみるよ
この世ってやつを

 ☆十一日目の朝☆

僕はまだ生きている
でも。。。いつもと違う
身体がしんどい
そっか。。。
この辺りがさすがに僕の限界なんだ
やっぱり死は誰にでも訪れる
運命も。。。
僕だけ見逃してはくれないみたいだ
あぁ。。。死ぬのは嫌だ
もうとっくに死んでいるはずの僕が
まだ生きてこんなことを言っている
それほど

生きるって素晴らしいものだった

あっ。。。そうだ
最期に会いたい奴がいる
生きてるうちに会いに行かなきゃ


 ☆十二日目の朝☆

とうとう終わりの日がやってきた
僕は、もう飛べない
あとはゆっくり死んでゆくだけ
昨日、親友の所へ行った
親友は、もう死んでいて
会えなかった
っていうか。。。
僕の知り合いはすべて
死に絶えていた
考えてみれば
当たり前のことだった
この世の中に一人ぼっち
取り残されている気分だ

生きるって孤独だ

この世が見知らぬ世界になった
もう未練なんてかけらもない
僕の大切な奴らが
みんな天国にいるのなら
僕もそっちのほうがいい
心からそう思った

だから。。。もういいんだ
楽しみだなぁ。。。
これから、みんなに会いに行くよ


 ☆十三日目の朝☆







image65.gif

もうすぐ秋がくるのだろう
昨日までうるさかった蝉の声
今日は全く聞こえてこない

それにしても蝉って奴は
たった七日を
鳴いて。。。飛んで。。。また鳴いて。。。
終わっていくだけ

生きてる意味なんてあるのかな
もっとも生きる意味なんて
考える時間すらないだろうけど(笑)

今朝。。。庭で
蝉の死骸を見つけた
こいつもたぶん
なんにも考えないまま
鳴いて、飛んで、また鳴いて
息絶えたんだろうな

無意味な命

あぁ。。。
蝉になんて生まれなくてよかった
僕はしっかり自分のことを
考えながら生きてゆく
時間はたっぷりあるからさ
人生って素晴らしいって
いつか胸を張って言えるように
僕は生まれたその意味を
探しながら生きていくんだ

蝉にはやっぱり無理だよね
そんなこと。。。
たった七日じゃ。。。
生きるってことがなんなのかさえ
わからないまま、死んじゃうよ

哀れな蝉に。。。合掌


image65.gif

 ☆十三日目の朝(天国にて)☆

本当に哀れなのは
どちらかなんて。。。考えるまでもない
さっきのあの子。。。人間の子
生きてるときはよく、追い掛け回されたっけ
まぁ、精一杯生きておくれ

生きるってことは日々。。。勉強(笑)

僕は今、天国で
大切な仲間たちと
楽しく暮らしてる

そしてこの時間は
ありがたいことに
永遠に続いていくんだ。。。

それがどんなに幸せな事か
僕は生きていた時間の中で
学んだような気がするよ

生きるってことは
やっぱすごいな。。。

それがわかるようになるまで
僕は仲間達より少しだけ
時間がかかってしまった
だから神様は僕の命を
少しだけ伸ばしてくれたんだよね
面目ない。。。そして、やっとわかったよ
生きることは素敵なことだ
でも。。。
ただ生きているだけじゃダメだ
僕を支えてくれる仲間達がいて
初めて僕は輝ける
天国には幸せしかないからさ
始めからここにいたら気づけなかったよ
幸せだってことすら。。。

そして、僕たちは永遠を手に入れた

永遠の話をしても
たった100年の人間達には
まだわからないだろうね。。。

それにしても。。。
ここまでたどり着くのに
100年もかかってしまうなんて
人間になんて生まれなくてよかった

哀れな人間たちに。。。合掌。。。
MB900228278.JPG

                おしまい

にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村



人気ブログランキングへ
nice!(5)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

結婚祝い [小さなお話]

結婚が決まったんだってね。。。
おめでとう
今が一番幸せって顔してるよ
ホントに良かったね
MB900250121.JPG
えっ?
結婚っていいものですか?って。。。
今、そう聞いた?
それ、聞いちゃう?

そりゃあ、私も結婚生活20年。。。
先輩っちゃあ、先輩だけどね
こればっかりは、人それぞれ
百人いたら、百通りの結婚の形が存在するんだよ
私の話なんて、役に立たないと思うけど

あら、そう。。。
参考までに聞いておきたいの。。。

そこまで言うなら、ちょっと話しちゃおうかな

結婚ってね
目の前にたくさんあるトンネルの中から
ここって決めたトンネルを
歩いて入っていくようなもんだと思うのよね
真っ暗なトンネルを。。。
ろうそくの明かり一つだけ持ってさ
っでね。。。
いつか出口が見えてくるだろうって
そう思って。。。
そう信じて。。。

そして、そのトンネルを抜けたらね
とても素敵な世界が広がってるはずだ!!!
なんて、期待に胸を膨らませながら

最初はさ、元気よく歌なんか歌いながら
歩いているんだけど
なかなか出口が見えてこなくて
そのうち不安になって
心細くなって
疲れて足も思うように動かなくなる
でも、立ち止まっても仕方ないから
必死に歩くんだよね

そうやって、歩いて、歩いて
20年。。。

ところがさ。。。
20年も歩いてきたのに
私の選んだトンネルは
結局、行き止まりだったのよ

なぁんだ、このトンネル。。。
開通してなかったのか。。。なんて
びっくりして言葉も出なかったわ。。。

いいえ。。。歩いている途中で
もしかしたら、こんなことになるんじゃないかなんて
思わなくもなかったのよ
でも、そう思っちゃったら
歩けなくなっちゃうでしょ
だから、そんな考えは打ち消して。。。
考えない様にして
ただ、光を求めて歩くんだよね
まあね。。。私の場合
結局行き止まっちゃったんだけどさ

もう20年。。。歩いてきちゃったからね
今さら戻るったってまた、20年歩かなきゃならないし
そんなことしてたら、人生終わっちゃうわよね
だからさ
戻るに戻れないんだよね。。。これが
ふふっ。。。笑えるでしょ
どうせ行き止まるんだったら
結婚して2、3年目くらいで行き止まって欲しかったわよね


あっ。。。ごめんなさい

これから結婚しようっていう人に
なんて話してるんでしょ
あくまで、これは私の場合で
ちゃんと出口までたどり着く人はいっぱいいるし
あなたは、きっと大丈夫よ。。。

ほらほら、そんな顔しないで
不安にさせちゃったみたいね。。。
本当にごめんなさい

絶対、幸せになってね
私の話なんて参考にもならないから
忘れてほしいわ
あなたはあなたのトンネルを
一歩一歩確実に歩いていけばいいんだから

ん?
それで、行き止まったトンネルの中で
今、私はどうしてるのかって???

これが不思議なのよね
20年もトンネルの中を歩き続けてるとさ
人間、強くなるのよ
最初は暗がりが怖くて
泣いてた日もあったのにね

今はさ。。。

自分で掘り進んでるわよ
出口を目指して
MB900383001.JPG
20年かけて入り口に戻るより
光に近いような気がして
泥だらけになりながらさ

いつか、光にたどり着けるはず。。。なんて
これもさ、思い込みかもしれないけどね

でもね。。。
思い込まなきゃ進めないのよ

それは私だけじゃなくて
みんな、そうだと思う
だって、誰もが幸せになるために
光を求めて。。。
その一歩を踏み出すんだもん
たったろうそく一本の明かりだけで。。。

それが、結婚なんじゃないのかしらね

あらあら、何で泣いてるの?
感動したって???
それほどの話じゃないわよ
なんせ、私のは行き止まりのトンネルなんだから

ふふふっ

あなたのトンネルは。。。
ちゃんと開通してるといいわね

末永く。。。お幸せに
結婚、本当におめでとう。。。

っでね。。。
私の結婚祝い、受け取ってくれる?

まさか使うことはないと思うけど
万が一ってこともあるからね。。。
行き止まった時のために

はいっ、つるはし。。。持ってきたわ

MB900334866.JPG
……。

やだ、冗談よ、冗談。。。
本当は掛け時計なの
使ってもらえると嬉しいわ

MB900435765.JPG
幸せになってね
あなたの明日に。。。
光が満ち溢れますように。。。

touka.png

さぁ、これでなんの思い残すこともなく
天国へいけます
結婚直前の自分と話したいなんて
我儘言ってごめんなさいね
でもね、死ぬ直前に走馬灯のように
今までの自分の人生が見えた時
思い出したんですよ
結婚直前に親戚のおばさんっていう人が
突然やってきて。。。
お祝いに掛け時計をいただいたこと
その時、トンネルの話をしてくれて。。。
あの話を聞いたから
私は心の中につるはしをコッソリ持って嫁に行ったんです
念のためにってね
だから、行き止まったときも
絶望だけはしなかった
結局、生きてるうちに光にたどり着けはしなかったけど
幸せでした
幸せって。。。辿りつく事じゃなくて
希望を持って前に進める時間のことを
言うんじゃないかって
人生を終えてみて。。。
そう事を思うんですよ
だから、これからトンネルへ向かう私に
教えてあげたかった
希望の種はいつも心に隠し持っていた方がいいって

これでもう大丈夫。。。
でも、あの日。。。
トンネルの話をしてくれた親戚のおばさんって
私自身だったんですね。。。
それが一番のびっくりです
死んでから、こんなにびっくりすることがあるなんて
思ってもみなかったわ

ふふふっ。。。

じゃあ、行きましょうか。。。死神さん
あなたが優しい方で
本当に助かりました。。。

    おしまい

にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ

nice!(2)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

しらすごはんと筑前煮 [小さなお話]

今年もお盆がやってきた
お盆がくるとママはとても忙しそうだ
お盆の飾り付けをして。。。
お供え物をして。。。
暗くなった頃、迎え火をたいて
お線香をあげて
お墓参りをして
ずっとずっとおうちのお仕事をしている

忙しくて大変だなって思う

ゆかのおばあちゃんは
ゆかが5歳の時、死んじゃった
悲しくて仕方がなかった
でも、お盆の間は
おばあちゃんはおうちに帰ってくるんだって
目には見えなくても
ゆかのそばにいるんだって

ママが教えてくれた
おばあちゃんが帰ってくるから
ママは、あんなに頑張って
お盆の支度をしているんだろう
ママは、おばあちゃんが大好きだったから。。。

おばあちゃん、聞こえる?
ゆかね。。。
もう小学生なんだよ
おばあちゃん。。。ここにいるんだよね
おかえりなさい。。。おかえりなさい

G004.gif
お盆のときは、毎日
おばあちゃんの好きだったおかずがならぶ

しらすごはんと筑前煮
けんちん汁も必ず出てくる

暑い夏。。。
煮物とか汁物とか
汗をいっぱいかきながら
ママは台所に立っている

おばあちゃんのためなら
どんなに暑くても我慢できるんだね

すごいなぁ。。。
ゆかだったら、絶対ダメ
でもいつか大人になったら
ママみたいに優しくなれるかな
そんなふうになりたいなぁ。。。

お盆が終わる。。。
送り火をたく

これでお別れだね
また、来年。。。

同級生の家では
送り火は夕方にたく。。。
家族みんなで
死んだ人の魂を送るんだっていう子が多いけど
うちを違う

朝いちばん。。。
まだ涼しいうちに
おばあちゃんを送り出す

「そのほうが、おばあちゃんが帰る時
涼しくって楽でしょ。。。」

って、ママが言ってた
帰り道の心配までするなんて
おばあちゃんのこと本当に
大切に思っているんだよね

すごいなぁ。。。
ママは、優しくて
とっても家族思い
きっとおばあちゃんも喜んでくれてるね

ばいばい。。。おばあちゃん
また、来年ね。。。

朝の送り火。。。
お盆は今日で。。。おしまい。。。


touka.png

「ただいま」

今年も。。。
聞きたくて聞こえるわけじゃない声が
私の耳元で響く

私はひたすら。。。聞こえないふり

ここで反応しちゃいけない
少なくとも、私が見えることを
お義母さんだけには気付れちゃいけない

もし、わかってしまったら

どれほど小言を言われるか。。。
想像しただけで恐ろしい。。。

くわばら くわばら

MB900355075.JPG

子供の頃から、私には霊が見える
でも、見えると言っても誰も信じてくれなかったし
見えることで得をしたこともない
っというより。。。
うそつき呼ばわりされたり
気味悪がられたり
悪いことばかりだ

なので。。。

幼い頃。。。
私は、見えることは誰にも言わないと誓った

霊を見ても
何の反応もしないようにして
霊が何を言ってようが
完全無視を貫いた

霊の方も、私が見えることがわかると
私の周りに群がってきて
あれをしてほしいとか
これをつたえてほしいとか
頼みごとばかりしてきた
かなり面倒くさい

見えないことにする。。。

それは、生きてる人間と上手くやってくために
そして、死んだ人間に煩わされないために

幼い私が選んだ最善の方法だった

それからは、人と同じように
普通に人生を歩んできたつもりだ

結婚をして。。。
娘のゆかが生まれた
同居していたお姑さんとは。。。

実は、あまりうまくいかなかった

ささいなことで喧嘩をしたり
いがみ合ったり。。。
私はお義母さんが嫌いだったし
お義母さんのほうも私が
嫌いだということもわかっていた

だがそれは。。。
親と同居をしている大半の家庭と同じ
私だけが取り立てて不幸というわけではない

夫は優しかったし
娘もすくすくと育っている
そんな事を考えれば。。。
むしろ、私は幸せなのかもしれない

けれど。。。本音を言うと。。。
同居は辛かった

そして、お義母さんが亡くなった
その死はあまりに突然で
だけど、私は
いけないと思いながらも心のどこかで
同居の終りを喜んでしまったかもしれない
家族を亡くした喪失感と悲しみは、確かにあった
でも、それ以上に。。。
同居というのは私には重荷だったのだ

これでもう。。。
お義母さんと暮らさなくてすむ。。。

その安堵感を
誰にも言えずに
私は私の心の中で
たった一人で噛みしめた

MB900429021.JPG

ところが。。。やがて
私のささやかな不幸が始まった

その不幸というのは
お義母さんが亡くなってからの最初のお盆
新盆と共にやってきた

「ただいま」

懐かしい声がする
見ると。。。
なんと、お義母さんが立っている

あっ。。。

思わずこちらも声をあげそうになったが
必死でこらえた

そっか。。。お盆って
本当に死んだ人が戻ってくるんだ。。。

私はその時、初めて悟った
年に4日間だけなので
ささやかではあるが
生きてるかぎり、毎年必ず。。。
お義母さんとまた
同居しなくてはならないことを

そして、お義母さんは、お供えの野菜を見ながら
こんなことを言い始める。。。

「私、生野菜なんて食べたくないのよ
せっかくたまに戻ってきたんだから

しらすごはんと筑前煮
それに、けんちん汁が食べたいわ。。。」

えっ。。。この暑い中。。。煮物???

それにしても、相変わらずだわ
死んでも少しも変わってないなぁ。。。
まず、お供え物のダメだしなんて

そう思ったら、可笑しくなった
なんだか不思議と
嬉しい気分になっている自分がいる

あれ。。。おかしいな。。。

あれほど嫌だったお義母さんの小言が
嬉しくって仕方がないなんて
いったい、どうしてなんだろう。。。

その日の夕飯の献立

しらすごはんと筑前煮
それにもちろんけんちん汁をつけた

少しずつとりわけて。。。
お義母さんへの影膳

生きていた時の自分の席に座っていたお義母さんが
にっこりほほ笑むのを見た

私もなんだか、無性に嬉しくなった

お義母さんと暮らした10年間
喧嘩ばかりしたけれど
助けてもらったこともある

何より。。。
同じ季節をいくつも一つの家族として過ごしたことで
好きとか嫌いとか
そういう感情よりもっと深いところで
もしかしたら生まれていたのかもしれない
家族の絆。。。というものが

とはいえ。。。嫌いなものは嫌い
苦手なものは苦手

私がお義母さんを嫌いということに
何の変りもない

お盆中に発せられた
お義母さんの数々の他の小言には
完全無視を貫いた

そして、お盆の最終日。。。
本当は、陽の落ちるギリギリまで
ゆっくりしていたいであろうお義母さんを。。。
朝の送り火で見送った

「今のうちなら。。。涼しいからね
気をつけて帰ってね。」

娘と一緒に送り火を見つめながら
そう呟いた

私は嘘つきだ。。。あははっ

でも、ご飯くらいは
お義母さんの好きなものを作ってあげようと思った
それくらいはしたかった

仮にも。。。
家族だったのだから

MB900355075.JPG

以来。。。

我が家のお盆のメニューは

しらすごはんと筑前煮
もちろん、けんちん汁つき。。。

送り火は。。。早朝。。。に決定した

そして、今年もお盆はやってきて
あっという間に終わってゆく

朝の送り火。。。
お義母さんは帰り際に
こんなことを言った

「もう少し、ゆっくりさせてよ。」

もちろん、完全無視だ!!!

あの世へ帰ってゆく
お義母さんの後姿を
朝日の中で眺める

するとふと、お義母さんが振り返って
手を振りながらこう叫んだ

「しらすごはんと筑前煮
 けんちん汁も美味しかったわ
 ごちそうさま。。。
 あんた、ほんとは見えてるんでしょ。
 まったく、うちの嫁は。。。
 嘘が下手で困るね。
 また、来年も来るからね。
 覚悟しておき!!!」

お義母さん。。。わかってたの?

お義母さんはニヤリと笑ってから
また、前を向き直し
そうして、スッと消えて行った

本当にびっくりした
さすが、私のお姑さんだ

仕方がない。。。
来年のお盆の送り火は。。。
夕方にしてあげよう。。。

そうしたら、しらすごはんと筑前煮
それに、けんちん汁を
もう一杯ずつ余計に食べて帰れるものね

今の私が、嫁として。。。
お義母さんに出来るのは
それくらい。。。

私はお盆が嫌いだ
だって。。。お義母さんが帰ってくるから

そして。。。暑い中
煮物をしなくちゃならないから

だけどなんだか
来年のお盆が。。。ちょっとだけ。。。
待ち遠しい

どうせ、ばれちゃってるなら
来年は。。。

私も。。。おかえりって。。。
言ってあげようかな。。。
なんて思ったりして

    おしまい

にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ


nice!(3)  コメント(14)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

真実 [小さなお話]

人間ってのは
愚かな生き物だ

愚かすぎて
助ける気にもならない

何でもかんでも
助けて、助けて。。。って

なんなんだ???

たまには、自分で解決したらいいのに

それに、苦しい時だけ頼みに来るのも
頭にくる
普段は、知らん顔

ありがたみなんて
これっぽっちも感じてないしさ

まったくもって。。。けしからん
人間なんぞ、早く滅びてしまえばいい。。。

あぁ、決めた。。。
もう人間なんて助けてやるもんか

絶対絶対絶対。。。
どんなに頼まれたって
助けてなんてやらないぞ!!!


チャリーン

突然。。。
俺の耳に美しいその音が響き渡った

その瞬間、俺の気持ちは揺れ始める

人間は、助けない
そう決めた。。。
そう決めたけど。。。
決めたんだけと。。。

あの音。。。あの素敵すぎる音が
俺の耳から離れない

あぁ。。。もうだめだ
とてもこの誘惑には勝てない

人間は嫌いだが
人間の作るものは、大好きだ

人間は滅びてもいいが
人間が作り出すもの
それがないと
俺は耐え切れないかもしれない

仕方ない。。。
また、助けてやることにするか

今度は一体、何をどうしろっていうんだろう

まぁ。。。なんにせよ
お賽銭を頂くんだ

きっちり仕事をしてこよう。。。

そういえば、今の音。。。
たぶん、10円か
もしかすると、100円かも

どちらにしても
今まで貯めた分を合わせれば

ガリリちゃんアイスバーが3本は買えるな

俺は、ガリリちゃんアイスバーが大好きなんだ

夏の暑さを乗り切るには
これが一番

なんて、素晴らしいものを作り出すんだろう
人間の画期的な発明品だよな

それに今年は新しく。。。
パイン味とバナナ味が追加された
これはもう、絶対に食べたい
もちろん、定番のソーダ味も捨てがたいしな

迷うなぁ♪

ひと仕事終えたら。。。
さっそくコンビニへ買いに行かなきゃな


◎  ◎  ◎

神様は。。。
地球に向かう隕石をひとつ
跡形もなく消滅させた
MB900438714.JPG
それが、地球に衝突すれば
地球上の生物はおそらく。。。
壊滅するはずだった

しかし、その事実を
人間は気付きさえしなかった

では、なぜ。。。
地球は助かったのか

一人の男が
神社で祈りを捧げたのだ
MB900343697.JPG

「今日、娘が生まれました。。。
 こんなに幸せなことはありません
 神様。。。
 どうか、これからも娘をお守りください
 健やかに成長してゆきますように。。。」

男は、裕福ではなかった
投げたお賽銭は。。。
10円硬貨一枚 
 

でも、祈りは届き
神様はちゃんと、仕事をした

人類は生き延びたのだ

人間たちは誰ひとり知らない
人類の危機も
神様が何をしてくれたのかも

そして。。。

人類を救ったのは

本当は。。。
ガリリちゃんアイスバーだったことも。。。
MB900251621.JPG

びっくりするような本当の話だが

真実とは。。。

案外、こんなものなのかもしれない

      おしまい

にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ

nice!(3)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

奴ら [小さなお話]

とある星のとある国
この国の奴らは
乱暴で誰の言葉にも耳を貸そうとしない
自分たちのためだけに作り上げた
利己的な正義をふりかざし
それに従わない国には
直ちに宣戦布告

奴らは、強かった
どの国も敵わぬほどに。。。

この星で、奴らがのさばり始めてから
この星は。。。
ひどく住みにくいところになっていった

奴らに対する対応は
国によってさまざまで
ある国は
仕方がなく奴らに従う道を選び
また、ある国は
奴らの目の届かない
辺境で不便な土地に移り住んだ

奴らは気まぐれで
したたかで
しかも、破滅的

その思考回路はとても理解し難く
常に周りの国を驚かせ続けた

従順な者に優しくしているかと思えば
突然、裏切り
時には。。。
命をも奪い、その肉を食らう

奴らの残虐な行動は
日々、エスカレートしているように思えた

ついに、耐えきれなくなった
国々の代表が集まり
国際会議が開かれた

奴らへの対応策を打ち出すためだ

「もう、これ以上。。。
 我慢が出来ない。」

「あぁ、もちろんだ。
 でも、どうする?
 奴らは強い。
 俺たちが束になってかかっても
 とても歯が立ちそうもない。」

「じゃあ。。。
 神様に頼むというのはどうだろう。
 奴らに勝てる者は
 もはや、神様以外には
 いないような気がする。」

「あの、実は。。。」

小さな国の代表が
おずおずと手をあげて話し始める

「私たちの国では
 それをもう試してみたのです。
 奴らを退治してほしいと
 私たちの信じる神様に
 お願いしました。
 結局。。。
 無駄に終わってしまった。
 奴らには奴らの神様が
 背後にちゃんといるのです。
 確かに私たちにとっては
 悪魔のような奴らですが
 奴らにとって闘うことは正義を守ること
 その正義がどんなに歪であろうと
 彼らにとっては、その歪みこそが
 正義なのです。。。
 そして、正しいことをしている者を
 守ることが神様の役目。
 奴らの神様は。。。まさしく
 戦争の神様でした。。。

 残念ながら、私たちの神様は
 負けたのです。」

「奴らは。。。
 神様よりも強いのか。。。」

どの国の代表の顔にも
絶望の色が浮かんだ

その時。。。

「いや。。。
 あきらめるのは、まだ早い。」

そう言い放った者がいた
それは。。。
国をあげて、長い間
奴らと闘い続けている勇敢な民族の長だった

「それぞれの国で違う神様に祈っていたんじゃ
 力も分散するさ。。。
 強い敵を倒すときは、大勢で協力しないとな。
 ここはどうだろう。。。
 この際、宗教の違いを乗り越えて
 ただ一人の神様に。。。
 みんなでお願いすることは出来ないだろうか。」

みんな、しんと静まり返った
さすがに、自分たちの信じる神様以外に
祈りをささげるのには、抵抗があったのだ

けれど。。。

このままでは
世界が終わってしまうかもしれない

事態はもう。。。
そんなところまで来てしまっていた

「よし。。。祈ろう。
 もう、迷っている場合ではない。
 みんなで力を合わせるんだ。」

奴らに沢山の同胞を殺された国の
国王が叫んだ

すると。。。
他の国々も次々と声をあげる

「そうだ、そうしよう。」

「もう、それしかあるまい。」

「だけど、どこの神様に祈るんだ?」

「それは、もう決まっているさ。」

「えっ?」

「我々の中で唯一
 奴らと勇敢に戦い続けている
 君たち民族の神様なら
 きっと、奴らを倒すことが出来る。」

「そうか。。。そうだな。
 長い間、奴らと闘い続けているもんな。
 君たちのことは
 奴らのほうも恐れていると聞いている。
 時には、その姿を見ただけで
 恐れおののいて逃げ出すものまでいるとか。
 君たちの神様なら。。。もしかして。。。
 よし。。。
 君たちの国の神様に祈ろう。。。」

全員の意見は、一致した

翌日から
この星のあちらこちらで
一斉に祈りの声が聞こえ始めた

そしてその祈りは。。。
休むことなく聞こえ続けた


MB900355075.JPG

「しまった。。。
 寝坊だ、遅刻する。」

さとしは、ベッドから飛び起きた
昨夜の深酒が祟った。。。
お日さまはもう、かなり高いところにある

いったいどれくらい寝過ごしただろう

正確な時間を知るために
とりあえず、テレビをつけた
MB900233772.JPG
すると。。。

真っ蒼な顔をしたキャスターが
慌てた様子で何かを喋っている

「今朝。。。
 突如あらわれた
 巨大なゴキブリは
 人間を次々襲い続けています。
 ミサイルも殺虫剤も効きません。
 もはや、人間になす術は。。。
 ぎゃあー!!!」

キャスターの叫び声とともに
テレビは砂の嵐を映し出す

いったい何が起こったんだ?

さとしには、まだ
訳が分からなかった

その時。。。
ふと。。。窓の外に気配を感じる

さとしは窓の外に目を向けた

「わぁあー!!!」

さとしが人生で最期に見たものは
巨大なゴキブリが
さとしに向かい
でかい口を開けている姿だった。。。


MB900355075.JPG
           

ゴキブリの国の神様が
人間の国を。。。滅ぼしてくれた

MB900053173.JPG

この星の。。。
ありとあらゆる生き物が

この神様に感謝をしていた。。。

            おしまい

にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ

 
nice!(1)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

再会 [小さなお話]

MB900445772.JPG

「あっちいなぁ。。。」

もう9月も半ばだというのに
茹だるような暑さが続いていた

僕は、たまらず。。。
ネクタイを首から外し
鞄に無造作に突っ込んだ

「おい。。。川口じゃないか?」

不意に、後ろから名前を呼ばれ
誰かと思いながら振り返ると
そこには、高校の時の同級生
「松山」が立っていた

「松山かぁ。。。
 久しぶりだな。
 えっと。。。
 15年振りだっけ?」

「おぅ。
 15年振りだな。
 元気にしてたか?」

「あぁ。元気は元気だが
 この暑さにはちょっとまいるね。」

僕はそう言って笑った

ギラギラと輝く太陽は
容赦なく僕らに降り注いでいる

「何をひ弱なこといってんだ。
 夏は暑いって決まってんだよ。」

「夏って言っても
 もう、9月だぞ。」

昔から、弱音を吐かない奴だった

「松山は、変わんないな。
 昔から。。。
 突然、野良犬に襲われても
 向かっていっちゃうし
 自分が正しいと思えば
 先生にだって食って掛かった。」

「ああ。。。
 男は、強くてナンボの生きもんだからな。」

「お前。。。いつの時代の人間だ?
 お前みたいなのを無鉄砲っていうんだよ。
 そんなこと言ってると
 熱中症でやられるぞ。。。」

「俺は、そんなふうにはならないよ。」

どこまでも強気な奴だ
そんな松山を見ていたら
ちょっと、からかってやりたくなった

 「でもあの頃さぁ。。。
 さすがのお前も。香ちゃんにだけは
 一言も話しかけられなかったよな。
 ほら、あの文化祭の日のこと
 憶えてるか?
 あんときの真っ赤になったお前の顔
 今でも思い出すよ。」

僕がそういうと、松山の顔が
みるみる真っ赤になってゆく

香ちゃんっていうのは、高校時代に
隣のクラスだった可愛い女の子

僕らの学年のマドンナ

松山は、香ちゃんのことが好きだった
普段は強気な奴だったけど
彼女の前では、いつもモジモジ

実は、僕も。。。だったけど

「香ちゃん。。。
 今頃どうしているのかな。。。」

僕がそう言ったとき
松山は、意外なことを言った

「俺。。。
 今、香ちゃんと一緒にいるんだ。」

「えっ?そうなの?
 結婚したのか?」

「結婚というか。。。
 たぶん、永遠に一緒にいると思う。」

「おいおい。。。永遠って
 よくそういうこと言えるね。。。
 ごちそうさま。
 香ちゃん、変わってない?」

「うん、ぜんぜん変わらない。
 綺麗で、素敵だ。」

「はいはい。。。もうわかったって。
 じゃあ今度、3人で酒でも飲もうよ。」

「そうだな。。。そうしよう。」

「じゃあ、近いうち。。。」

「おう。じゃあな。」

僕は松山と別れて
家路についた。。

s-0166.png

その夜

窓から月明かりが届く
自宅のキッチンに。。。
僕は、手作りの料理と
キンキンに冷やした冷酒を用意した

杯は。。。三つ
よし、これで準備完了だ

ここで、ふと思い出す。。。

「あっ。。。ネクタイ。」

僕は、鞄の中から
突っ込んだままになっていた
黒いネクタイを取り出して
タンスの中に仕舞った

s-0166.png

今日、僕は。。。
友人の葬式に行った

松山に会ったのは
その帰り道だったんだ

びっくりしたよ

だって、松山。。。
僕は、お前の葬式に出た
その帰り道だったんだから

だけど、思ったんだ
お前。。。
最期に会いに来てくれたんだよな

だから、僕もお前が死んだこと
知らないふりをするって決めたんだ

これでも、泣きそうだったんだぜ

お前と別れて
家に帰ってから
電話をかけて確かめた
香ちゃんと仲の良かった沢村さん。。。
彼女に聞いたよ
香ちゃんも亡くなっていたんだな

10年も前に。。。

変わらないはずだ。。。
綺麗なはずだ。。。

でも、切なかったよ

お前がこれから天国で
一人じゃないっていうのが
せめてもの救いかな。。。

お前も。。。香ちゃんも
せっかち過ぎるよ

早すぎるよ。。。

約束したからな
今夜、3人で飲もう。。。

僕が全部、用意したんだぜ
一人暮らしも長いから
料理には、自信あるんだ。。。

MB900395516.JPG

今夜は、朝まで飲むぞ。。。
覚悟しろよ

僕は、三つの杯に冷酒を満たす

MB900417180.JPG

「それじゃ。。。
 ホントに今まで、お疲れ様。
 最期に会いに来てくれてありがとう。
 嬉しかったよ。。。
 そっちで、香ちゃんと一緒に
 仲良くな。。。
 でもさ。。。
 僕が行ったら、仲間に入れてくれよな。

 じゃあ。。。
 久しぶりの再会と
 松山と香ちゃんの永遠に。。。

 献杯。。。」

MB900055187.JPG

窓から見える月に向かって
杯を高くあげる

二人の冥福を
心から祈りながら。。。

それから僕は
注がれていた冷酒を
ゆっくり。。。静かに。。。
飲み干した

       おしまい

にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村



人気ブログランキングへ

nice!(2)  コメント(8)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

赤い糸 [小さなお話]

あら。。。みぃちゃん
メガネなんかかけてどうしたの?

えっ?

そのメガネをかけると
運命の赤い糸が見えるの
そりゃあ、凄いメガネね。。。

MB900331619.JPG

ん?
パパとママの赤い糸はあるかって???
うんうん。。。
小指と小指にね
ちゃあんと繋がってるでしょ。。。

えっ?
なんで、パパとママの赤い糸だけ
コブ結びだらけなのかって?

あら。。。
そんなとこまで見えちゃうの?
まぁ。。。
最初は、神様の手違いで
パパの赤い糸は
別の人に繋がってたからね

でも、大丈夫
ママが気付いて
ちゃんときっちり直したから

どうやったのかって???

簡単よ

赤い糸をパチンと切って
ママの小指に結んだの
もちろん、コブ結びでね。。。

そしたらパパったら
ママをからかって
その糸を引きちぎって
逃げようとするのよ
せっかく結んだのに。。。

パパは昔から
好きな人には
つい、意地悪しちゃうタイプなの。。。
笑っちゃうわよね

でも。。。
ママはこう見えて
努力家で粘り強いから
何度引きちぎられても
また繋ぎなおしたわ
もちろん、コブ結びでね

そしたら。。。いつの間にか
コブ結びだらけになっちゃった
まぁ。。。
繋がってれば、問題はないけどね


そうそう。。。
こんなこともあったわ
パパの小指にもう一本
別の赤い糸が結ばれていて
その糸、何度切っても
自然にまた繋がっちゃうの

その時、ママはどうしたかって?

繋がっちゃうものはしょうがないから
切るのをあきらめて
赤から。。。黒に
糸の色を染め変えたの
ずいぶん時間かかったわ

赤い糸を黒に染める方法???
みぃちゃん、そんなこと聞きたいの?

簡単よ
呪えばいいの。。。

相手の人はどうなったのかって???

みぃちゃん。。。
何にも知らないのね

人は呪うとね。。。
死ぬのよ

ママも。。。
殺したいわけじゃなかったのよ
でも、不可抗力。。。よね

それからは、パパももう
糸を引きちぎったりしなくなったわ

みぃちゃん。。。
何言ってるの?

違うわよ。。。
逃げるのをあきらめたからじゃないのよ
パパとママは赤い糸で結ばれてるから
そういう運命なの

それって、ストーカーだっていうの???
パパが、このコブ結びの数は
あきらめの数だって言ったって?

パパとママの赤い糸の
コブ結びの数は
愛の証の数に決まってるじゃない

パパは、冗談を言っているのよ
また、ママをからかっているのね

まったく仕方のない人ね
でも、もう慣れたわ

だって。。。
パパは昔から
好きな人には
つい、意地悪しちゃうタイプなの。。。

笑っちゃうわよね

ふふっ。。。


にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ
nice!(3)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

かくれんぼ [小さなお話]

「かくれんぼしよう。」

僕の提案に
ひろくんはすぐ、賛成してくれた

「うん。。。そうしよう。
 じゃんけんで、鬼を決めようぜ。」

じゃんけん ぽい!!!
。。。あいこで しょ!!!

「あ。。。負けた。
 僕の鬼だね。

 じゃあ、ひろくん
 僕が100数えるから
 その間に隠れてね。」


MB900408102.JPG

ここは。。。
僕たちが小さい頃から
遊び場にしている神社の境内

鬼になった僕は、目をつむって
ゆっくりと数を数え始める

いち。。。にい。。。さぁん。。。しぃ~。。。ごぉ~。。。
。。。。。。。。。
きゅうじゅうはち。。。きゅうじゅうきゅう。。。

ひゃ~く!!!


よぉ~し、探すぞ

ここかな。。。ちがうなぁ
どこかな。。。いないなぁ

きっとこのへんかも。。。
ちがった。。。

ひろくん、隠れるの上手だな

ちっとも見つからないや

待ってろよぉ。。。
絶対見つけてやる!!!


ずいぶん長い間、探し続けた。。。
どれくらい時間がたったのだろう
いつのまにか。。。
夕焼けが燃えだしている

ひろくんたら。。。
いったいどこへ隠れたの?

僕は、あちこち探し疲れて
神社の境内に戻ってきた


もしかした、ひろくんも
境内に戻っているかもしれないと思って

だって。。。

もうそろそろ、晩御飯の時間だもんな

けれど、そこにひろくんの姿はなかった
まだ、隠れているのかなぁ

僕はもう一度。。。
あたりをゆっくり見渡した

すると、御社のすぐ隣にある御神木の後に
ちらりと人影が。。。

きっとひろくんだ!!!

かけよって
のぞきこむ

ほら、やっぱりひろくんだ!!!

「ひろくん、みっけ!!!」

「あっ。。。見つかっちゃった。」

「じゃあ、今度はひろくんが鬼だよ。
 でも、今日はもう。。。お腹がすいたし
 続きは明日ね。」

「明日は無理。。。」

「えっ、なんで?
 用事があるの?」

「うん。。。
 行かなきゃいけないとこが出来た。
 だから、もうかくれんぼは出来ない。
 たぶん。。。
 もう遊べないと思う。」

「えっ?なんで???
 もうって。。。
 ずっとってこと?
 そんなのやだよ。
 どうして?
 引っ越すの?」

「そう。。。だな。
 引っ越すことになっちゃったんだ。」

「それなら、もっと早く言ってくれればいいのに。。。」

「急に決まったんだよ。
 ほんとにごめんな。。。」

「うん。。。
 でも、もう会えないなんて
 さみしいよ。」

「あぁ、さみしくなるな。」

「引っ越しじゃあ仕方ないけどさ。
 元気でね。。。
 手紙書いてよ。。。こっちも書くから。」

「うん。。。わかった。」

「じゃあ、ばいばい。。。」

「ばいばい。。。」

line_check03.jpg

「ばいばい。。。」
そう言って、よっちゃんに手を振った

俺は。。。
そろそろ行かなきゃいけない

久しぶりのかくれんぼ。。。
ちょっと熱くなりすぎた

俺は、絶対見つかりたくなくて
神社の真ん前にある公園の
ストックハウスの中に
隠れようと思ったんだ

普段は、廃品回収用の物置として使われている
ストックハウス

でも、この間。。。廃品回収があったばかり
だから、今は。。。
空っぽのはずだ

あそこなら、絶対見つからない自信があった

少し距離があったが
俺は、公園を目指した

急がないとよっちゃんが
探しに来る

ちょっとあせっていたんだ

あせる必要なんてなんにもないのに。。。
ただのかくれんぼなのに。。。

そしてつい、左右を確認せずに
道路を渡ってしまった

その時、トラックが
もの凄いスピードで近づいてくるのが見えた

MB900236987.JPG

あとのことは
よくわからない。。。

気付いた時には
病院にいた


……。

お母さんが泣いていた
お父さんも泣いていた

俺が病院のベットで寝ている

わぁー、体中、怪我だらけ


大変だ!!!

って?

なんで俺があそこにいるの?

俺があそこにいるってことは。。。

じゃあ、ここにいる俺は
いったいなんなんだぁ?

その時初めて
俺は、宙に浮いていることに気が付いた

ということは。。。
つまり。。。

そっか。。。
俺。。。死んじゃったんだ

ふいに
そばに誰かが近づいてくる気配がした

「だれ?」

「私は天使さ。
 迎えに来たよ。。。
 さぁ、天国まで案内してあげるよ。」

「ちょっと待ってよ。
 俺、今。。。かくれんぼの途中なんだよ。
 きっとまだ、よっちゃんが
 俺を探しているはずなんだ。
 
 せめて、よっちゃんに。。。
 さよならが言いたい
 お願いだから。。。ちょっとだけ待ってよ。」

「えっ?
 そうか。。。う~ん。。。
 ほんとはこういうのいけないんだけど
 突然だったもんな。。。
 まっ。。。いっか。
 じゃあ、ちょっとだけだよ。
 ちょっとだけなら、待っていてあげるよ。
 今の君。。。生きてる人には見えないはずだから
 ついでに。。。
 そのお友達にだけには見えるようにしてやるな。」

天使は、俺の願いを
おまけつきで叶えてくれるらしい

優しい天使でよかった

「ありがとう。」

俺はお礼を言って
急いで。。。
あの神社に向かう

神社では、やっぱり
よっちゃんがまだ、俺を探してくれていた

もう。。。夕焼けの時間

あいつはそういうやつなんだ
もう、何時間も探し続けてくれてるんだろう

俺が先に帰っちゃったかも。。。とか
思ったりしないんだよな

そういうとこが好きで
親友をやってるんだ

でも、よっちゃんとかくれんぼ
もう出来ないんだよな。。。

そう思うと涙が出てくる
よっちゃんにこんな顔を見られたくない

最後は、笑って「ばいばい」する。。。
それが、男ってもんだ。。。たぶん

とりあえず、気持ちが落ち着くまで
神社の御神木の陰に隠れることにした

俺は、うつむいて
気持ちを落ち着かせようとした

涙よとまれ!!!
って願いながら


「ひろくん、みっけ!!!」

突然。。。よっちゃんの声がした

顔をあげると
よっちゃんの笑顔が
俺の目の前にあった。。。

「あっ。。。見つかっちゃった。」

努力の甲斐あって
涙はどうにか
止まっているみたいだ

よかったぁ

でも、よっちゃんに
なんて言えばいいんだろう

俺は悩みながら
結局。。。死んでしまったことを
最後までよっちゃんには言えなかった

死んでるなんて言ったら
怖がって逃げちゃうかもしれない

そう思ったら
本当のことなんて言えるもんか

何にも言えないまま
それでも俺は、よっちゃんに
「ばいばい。。。」と言った。。。


よっちゃんと別れた後
天使のところに戻る

これから、天国へお引越し。。。だ

「ねぇ。
 天国から、手紙書ける?」

俺は、天使に聞いてみた

「一通だけならね。」

「そっか。。。
 一通だけなのか。」

「でもね。
 一年に一度はここに戻れるよ。
 ほら。。。お盆の時にさ。
 その時におとうさんやおかあさんや
 仲のいい友達に
 また、会えばいい。。。」

「そうなの?
 じゃあ、お盆が来れば。。。
 友達とまた、かくれんぼ出来るかな。」

「う~ん。。。
 君の姿は生きてる人には
 見えなくなっているからなぁ。。。」


かくれんぼするのは。。。
やっぱり、難しいのか


でも、俺はお盆が来たら
とにかく挑戦してみようと思った
また、よっちゃんと遊びたい
かくれんぼをやりたい
そんなふうに思ったから


天国で。。。
よっちゃんへ手紙を書いた

約束したもんな。。。
手紙を書くって。。。


line_check03.jpg


朝目覚めると
枕元に一通の手紙が置いてあった

 よっちゃんへ

 お盆にもどるから
 かくれんぼの続きをしよう。
 見つからないように隠れろよ。
 今度は俺が鬼だからな。
          
           ひろより

かくれんぼをしたあの日。。。
交通事故にあって死んじゃった
ひろくんからだ

ひろくんが病院で息をひきとった頃
僕は、ひろくんと神社で話をしていた

あの時、パパとママに何度もそう言ったけど
結局信じてもらえなくて、悔しかった

もう二度と
ひろくんには会えないと思ってたんだ

でも。。。
お盆が来たら会える

僕はとっても嬉しくなった

その日から。。。
僕は、お盆を心待ちにした

カレンダーに
毎日毎日、印をつけながら
お盆が来るのを待っていたよ

そして。。。ついに
待ちに待ったお盆がやってきた

僕は、あの神社でひろくんを待った

誰にも信じてもらえないだろうけど
ひろくんは。。。本当に神社にやってきたんだ

「優しい天使がいてさ
 お盆の間、一日だけ。。。
 よっちゃんに
 俺の姿が見えるようにしてくれたんだ

『ほんとはこういうのいけないんだけど
 かくれんぼするんじゃ、見えないと困るもんな
 まっ。。。いっか。。。』

 ってね。」

ひろくんは、そう言って笑った
ひろくんが笑ったから、僕も笑った

ひさしぶりだよね
こうして笑いあえるのって

そうして二人で
かくれんぼをした。。。

もちろん、ひろくんが鬼で。。。


line_check03.jpg

あれから、毎年。。。
お盆がくるたび
俺らはあの神社で待ち合わせて
かくれんぼをしている

去年は、よっちゃんが鬼だったから
今年は俺が鬼の番

いつものように、神社でよっちゃんを待った

でも、いっこうに現れない

そっか。。。

今年はたぶん
よっちゃんはここにはこないな。。。

でも、よっちゃんの居場所はわかってる

俺は鬼だから。。。
これから探しに行くよ

真っ白い建物の真っ白い部屋

そう。。。ここは病院

俺は、よっちゃんの病室へ向かう

病室に入ると
よっちゃんはベッドで寝ていて
そのまわりには、よっちゃんの家族
みんな心配そうによっちゃんを見つめている

よっちゃんの。。。奥さん
息子たちそして、孫たち

みんな、よっちゃんの自慢の家族だ
よっちゃんが家族の話をするとき
とっても幸せそうな顔になる
その顔を見るたび

あぁ。。。よかったなぁ
よっちゃんは、しあわせなんだなぁ。。。
って思っていたよ

その自慢の家族に見守られながら
よっちゃんはこの病室にいる

しばらくすると。。。

よっちゃんは。。。深呼吸を一つした
大きな大きな深呼吸だった

そして。。。

それきり。。。もう。。。
よっちゃんが息をすることはなかった

あれが。。。最後の一呼吸。。。

よっちゃんの呼吸が止まった

「ご臨終です。」

医師が家族に
そう告げていた。。。

次の瞬間。。。

よっちゃんの魂は
身体をふっと抜け出して。。。

俺の前に現れた!!!

俺は言った

「よっちゃん。。。みっけ!!!」

「あっ、ひろくんだ。探しに来てくれたの?」

「うん、迎えに来たんだ。
 これからは、毎日かくれんぼできるな。」

「うん。。。そうだね。」

よっちゃんは、自分が今どういう状況なのか
ちゃんとわかっているらしい

さすが、大人だなぁ
昔の俺とは大違いだ

「じゃあ、いこうか。」

俺がそういうと。。。

「ちょっとまってね。」

とよっちゃんは言った

そして、家族の方へ向き直り
大きい声でこう言った

「今まで、本当にお世話様でした。
君たちのおかげで
楽しい人生でした。
ありがとう。。。」

もちろん、家族にはもう
よっちゃんの声は届かない

それでもいいんだよな
聞こえないってわかっていて
それでも、そう言わずにはいられないほど
きっと。。。きっと。。。
よっちゃんの人生は素晴らしいものだったに違いない

俺は、そんなふうに思った


「じゃあ。。。
かくれんぼの続き。。。やりにいこうか。」

そう言いながら、よっちゃんが笑う
これからはまた二人。。。
夕焼けが燃えるまで、毎日遊べるな。。。

永遠のかくれんぼの始まりだ

俺たちは二人で仲良く。。。
天国へ旅立った


line_check03.jpg


一方。。。こちらは
二人が天国へ旅立った後のよっちゃんの病室


「ねぇ。。。なんだかおじぃちゃん。。。
嬉しそうに見えないか?
そりゃあ、死ぬのが嬉しい人なんていないと思うけど
ちょっと笑っているような
穏やかな顔しているよね。」

「うん。。。
前にさ、おじぃちゃん、こんなこと言ってたよ
おじぃちゃんには、あの世に仲のいい友達がいるから
死ぬのは全然怖くないって
また、その友達と毎日遊べるようになるからって。。。」


「そっか。。。
案外、今頃は
その親友と一緒なのもしれないな。
だって。。。
死に顔がこんなに嬉しそうだなんて。。。
きっとその親友が迎えに来てくれたに違いないよ。」

「だったらおじぃちゃん、さみしくない?」

「うん、さみしくないさ。きっと。。。」

「そっか、ならよかった。」

よっちゃんは。。。

最期まで優しい家族に囲まれて
幸せな人生をおくったのだ

line_check03.jpg


そして。。。今。。。

天国には。。。
数を数える元気な声が響き渡る

そう。。。あの二人が
かくれんぼをしているのだ

「じゃあ、ひろくん。。
今度は僕が鬼だから
100数えてるうちに隠れてね。」

いち。。。にい。。。さぁん。。。しぃ~。。。ごぉ~
。。。。。。。。。
きゅうじゅうはち。。。きゅうじゅうきゅう。。。

ひゃ~く!!!


              おしまい



着地点が見つからず
玉砕寸前のお話になりました。。。面目ない

えっ。。。すでに玉砕してるって???

そうかも(汗)

あぁ。。。まだまだです
もっと勉強します。。。はい。。。

また。。。
のんびり次回作を考えます。。。

長い目で見てください。。。(~_~;) ヨロピク

にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ
nice!(0)  コメント(8)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

順番待ち [小さなお話]

やぁ。。。
こんなところで会うなんて
奇遇だね

いつもは、朝しか会わないもんな。。。

えっ?
ここで何をしていたのかって?

今日は一日。。。
ここで空を見ていたんだ

僕は空が好きなんだよ

朝日の眩しさは
とても気持ちがいいし。。。
夕焼けはあまりにも美しい。。。
星空は魅力的で。。。
ワクワクするしね

いくら見上げていても
飽きないのさ

だから、毎日毎日。。。
空を眺めながら暮らしている



えっ?
仕事?

仕事ねぇ。。。
あえて言えば


今、順番待ちをしているところだ。。。
そう、順番待ちが僕の仕事なんだ
他にすることもないんでね

ん?
それで、幸せなのかって?

あぁ。。。
あらまし。。。幸せだ

おや?
不思議そうな顔をしているね

なら。。。
話してあげてもいいよ
僕の順番待ちの話

聞いてみるかい?

ハートライン.gif


「おはようございます。部長」

僕はそう言って頭を下げた

いつもの朝
いつもの挨拶

「あぁ、おはよう。。。」

ここでいつもなら
部長のまだ眠そうな声が聞けるはずだった

でも、部長は返事をしない

というより。。。
僕を見ようともしない

なぜだ?

そう考えると頭が痛くなった

昨夜はちょっと飲み過ぎたな

嫌なことがあったもんだから、つい
そう。。。昨日は
とっても嫌なことがあったんだ

……。

あれっ?
いったい何があったんだっけ

……。

あっ!!!

やっと僕は思い出した
昨日の最悪な出来事

そうだった。。。
僕は。。。

リストラされたんだった

なんてことだ
クビになったって言うのに
のこのこ会社にやってくるなんて
僕はなんて馬鹿なんだろう

だから。。。
部長のやつ、無視しやがったんだ

もう僕には
朝の挨拶すら必要ない

そういうことなんだろう。。。

ひどい仕打ちだ。。。


しかたなく
僕は家に帰った

昨夜は深酒をして
途中から記憶が消えている

妻にはまだ。。。
リストラのことは言えていないはずだ

でも、今日は言わなきゃな
黙ってたって、どうせ。。。
すぐにわかってしまうことだ

「ただいま。」

そう言いながら
玄関のドアを開ける

返事はない

妻は、どこかに出かけているのかもしれない
まさか、こんな時間に僕が戻るなんて
思ってもいないだろうから。。。

ちょっとほっとする

だが、リビングに入ると。。。
そこに妻はいた
テレビを観ながら
コーヒーを飲んでいる

「ただいま。。。
 実はさ。。。言いにくいんだが
 僕は、リストラにあってしまった。
 でも、心配するな。
 なんとかするから。。。
 とりあえず、失業保険をもらおう。
 それでしばらくは、暮らしていける。
 すぐ、次の仕事も探すよ。
 ほんとにごめんな。。。」

うつむきながら
一気に言葉を並べたてた
この不景気だ
そう簡単に、なんとかなるなんて
とても思えなかったけれど
こう言わないと話は進まない

全部言い終えて
少しだけ、気が楽になる
こんな言いづらいことは
パッと言ってしまうに限る

妻の反応が気になって
そっと顔をあげた

相変わらず。。。

妻はテレビを観ていた
こちらのほうなど。。。
見向きもせずに

まさか、聞こえなかったのか?
いや。。。そんなはずはない
妻はたぶん。。。
あえて、無視をしているのだろう

お前もか。。。

部長と同じだ
働かないものには。。。
かける言葉もないってか???
妻の反応に。。。唖然とした

昔は。。。
そう、結婚したばかりの頃は
こんな女じゃなかった
僕が会社に行こうとすると

「寂しいから。。。早く帰ってきてね。」

なぁんて言われたもんだ
変われば変わるもんだな

結婚すると女は変わる。。。

それは、よく聞く話だが
変わったように見えても
夫がピンチの時には
支えてくれる
それが夫婦だと思っていた
でも、現実は。。。。

無視だ

ははは。。。切なくて笑っちゃうよ。。。

妻は、テレビから視線を外さない

いたたまれなくなって
そっと家を出た


家のすぐ前に公園があった
そこのベンチにとりあえず腰掛ける。。。

MB900417066.JPG

あ~、やだやだ
スーツ姿で。。。こんな時間に。。。
公園のベンチに一人で座っているなんて

リストラされました!!!

って公言しているようなもんだ

まっ、仕方がないか

ほんとのことだから。。。

はぁ~

「おや。。。渡辺さん
 どうされたんですか?
 こんなところで。。。」

ふいにそう声をかけられた
見るとお隣の鈴木さんだ

「あっ、鈴木さん
 おはようございます。
 ちょっといろいろありまして。。。」

「そりゃあ、いろいろあったでしょう。
 こんなところにいるくらいなんだから。
 よかったら、私に話してみませんか?
 何かお力になれるかもしれませんよ。」

なんだろう。。。
この馴れ馴れしさ。。。

鈴木さんとは、いつも道で会えば
挨拶はするけれど
特に親しいわけでもなかった

今まで、仕事仕事の毎日で
隣の人がどんな人なのかなんてこと
まるで、興味がなかったから
鈴木さんについても
何も知らないに等しい。。。

鈴木さんって。。。
こんなに世話焼きタイプだったのか

力になるっていうけど
リストラされたと話せば
新しい就職先でも紹介してくれるかな。。。

たぶん。。。無理だろうな

鈴木さんはどう見ても
バリバリ働いているようには見えなかった
生気がないっていうのか
影が薄いっていうのか
そんな感じのする人だ

そもそもこの人が、何の仕事をしているのか
僕はそれすら知らなかったのだ

っが。。。
よく知らない人だから
話してみようという気になった

部長も妻も
無視しやがって。。。
僕の話を聞こうともしない

鈴木さんなら
ただ、聞いてくれるだろう

話すだけで。。。
少しは気持ちが軽くなるかもしれない


そう思って僕は
話を始めた

鈴木さんは。。。
うんうんと頷きながら
熱心に僕の話を聞いてくれた

それだけで。。。ありがたかった

「っで。。。
 情けないことに妻にも無視をされて
 こんなところでぼんやり座っていたわけです。。。
 でも、聞いていただけて楽になりましたよ。
 これから、職探しに行ってこようと思います。。。
 少しは、頑張らないといけませんよね。」


今まで、うんうんと頷き続けていた鈴木さん
なぜか、ここで首を横にふる

「いや。。。頑張らなくていいと思いますよ。」

「えっ?」

頑張らなくていい???

それは。。。慰めているつもりなのか
それとも、鈴木さんなりの励まし方なのだろうか

そういえば、最近読んだ本に。。。
精神的に疲れている人に
「頑張れ!!!」は禁句だと書いてあった気がする

そうか。。。
あれを実践しているってわけだな

「それでもね。。。
 僕は、頑張りたいんです。
 妻のためにもね。。。」

「あなたはもう十分頑張ってこられた。
 結果は、あなたの望むものではなかったでしょうが
 あなたの頑張りは本物でした。
 私はよく知っていますよ。
 あなたがどんなに頑張っていたか。
 もう、いいじゃないですか。
 
 こちらもそう悪くはないですよ。
 慣れてしまえば
 自由で。。。気ままで。。。気楽でね。」

「こちらって。。。どういう意味です?」

鈴木さんももしかしたら。。。
リストラ組?

その時。。。

自宅の前に
一台のタクシーが止まるのが見えた
妻が血相を変えて家から出てくる

そして、そのままタクシーに乗り込み
どこかへ出かけて行った

いったい何があったのだろう。。。
僕は気になった

「あの。。。鈴木さん
 ちょっと、妻が心配なので
 今日はもう帰ります。
 話を聞いてくれてありがとうございました。
 また、ゆっくりお話しさせてください。。。
 それじゃあ。。。」

僕が家に戻ろうとすると
鈴木さんが僕の腕をぐっと掴む

「何をするんだ。」

僕が叫ぶと鈴木さんは。。。
慌てた様子もなく
さっきと同じ穏やかな口調で
こう言った

「ちょっと待ちなさい。。。
 今、帰っても仕方がない
 私の話を聞きなさい。」

「でも、急いでいるんですよ。」

僕は、鈴木さんの手を振り払おうとしたが
凄い力で掴まれていて
どうにも振り払うことは出来なかった

「まぁ、聞きなさいって。。。
 あのね。。。
 あなたは昨日、リストラされて
 やけ酒を飲んで
 そのあと。。。人生に失望して
 首を吊ったんですよ。
 会社の裏の空きビルで
 思い出しませんか?
 
 たぶん、あなたの死体が発見されて
 奥さんに連絡がいったのでしょう
 もうあなたに。。。
 出来ることはありません。
 だって。。。死んでるんですから。。。」

「何をバカなことを。。。あっ。。。」

そこで。。。
僕の記憶が、突然戻ってきた

そう。。。
それは確かに昨日の記憶だ

昨夜、僕は。。。首をつった
リストラにあい、途方に暮れたのだ
この不景気だ
再就職はむずかしい
これまで死に物狂いで働いて
結果がリストラ
僕にはもう。。。
生きる気力が残っていなかった

あぁ。。。そうだった

そう考えれば
今朝からの出来事のすべてに
納得がいく

だったらなぜ、僕はここにいる?

「僕は幽霊になったんですね。
 だから、部長も妻も僕が見えなかった。
 嫌がらせで無視をしていた訳ではなかったのか。。。
 でも、だったらなぜ。。。
 鈴木さんには見えるんですか?」

「簡単なことですよ。
 私も幽霊だからです。。。
 人は死ぬとふつう天国へ行くんですがね。
 あなたは、天国へ行くより
 会社に行きたい気持ちが強かったんですね。
 リストラされたっていうのにまだ。。。
 もう、死んでいるというのにねぇ。。。
 でも、わかりますよ。
 実は、私もそうだったんです。
 だから、わかります。
 天国へはいずれ行けるはずなんですが
 順番があるみたいで。。。
 死んだ直後の最初のチャンスを逃すと
 しばらくは、この世で待ってなくてはならないのですよ。

 っで、私は順番待ちをしてるってわけです。。。

 私の姿形は、普通の人には見えませんが
 人間の中には。。。まれに霊視能力がある人がいるでしょ。
 人恋しい時には、そういう人と話をすることにしています。
 あとは。。。自由気ままに。。。
 何をしてもいいわけです。」

「えっ。。。
 だって、私は鈴木さんのことを
 随分前から知っていますよ。」

「そう。。。そうでしたね。
 あなたには、その霊視能力があったんですよ。
 自分では気づいてはなかったみたいですが。。。

 私は、人恋しくなると
 あなたや。。。
 まぁ、他にも何人かいる霊視能力のある人に
 朝の挨拶をしてまわっているんです。
 すると。。。
 私はここにいるんだって実感して
 安心するんです。
 死んでいるのにね。。。
 いや。。。死んでいるからこそなのかもしれません。
 よかったら・・・霊視能力者のリスト
 差し上げますよ。。。

 まぁ。。。気長にいきましょう。。。」

「そんな。。。ことって。。。」
 
僕の体中の力が抜けていくのがわかった

ハートライン.gif

こうして。。。
僕の長い順番待ちが始まったんだ

2週間くらい前。。。
鈴木さんの順番がやってきて
天国へ逝ってしまったので
今は。。。一人ぼっちだ

人恋しくなったら
霊視能力のある人に会いに行く

「おはようございます。。。」

「あっ、おはようざいます。」

「いってらっしゃい。」

「はい、いってきます。」

そして、軽い会釈


それだけでいいのだ
それだけで。。。僕は生きてる。。。

いや、死んでるんだっけ。。。

とにかく、自分はここにいる
。。。ということが実感できる

自殺なんて早まったなぁと
今は心から思うよ

でもさ

死んで初めてわかったこともある
僕には、生きてるあいだ
仕事ばかりに気をとられて
気付かなかったことがたくさんあった

朝日がとても眩しいこと
夕焼けが美しいこと
夜空が魅力的なこと

そんなことを改めて確認しながら
時間を過ごすようになったら
案外、こちらも悪くないかもしれない
そんなことを思うようになったよ

つくづく思うんだけどさ
仕事ってなんなんだろう。。。

朝日より輝いて
夕焼けよりも大切で
星空よりも素敵なものだったのか

死んでしまった今ではもう。。。
生きていたころの気持ちは
よくわからなくなってしまった

ただ、こうも思う

もしも、もう一度生きなおすことが出来るなら
今の僕なら、必ず幸せになれるだろうって

この世には。。。
人を幸せにする材料が
たくさんころがっているのさ
しかも、ありがたいことに
無料の幸せだ


生きているうちは
気付かないんだよなぁ
僕みたいに

なんてもったいないことをしたんだろう

まぁ、それでも。。。
今はこんなに素晴らしい景色を
毎日眺めて暮らせているから
あらまし幸せな気分で
順番待ちを続けていられる。。。

おいおい。。。
そんなに変な目で
僕を見るのはやめておくれ

嘘だと思っているのかい?
まぁ、信じられないのは無理もない

だが、真実さ

君の名前
鈴木さんのリストに載っていたんだ
鈴木さん。。。覚えているかい?

最近、見かけなくなっただろ

そりゃそうさ

彼は今頃。。。
天国にいるんだから

クックックッ。。。

これで、僕の順番待ちの話はおしまい

どうだい
面白かったかい?


あっ。。。


それと、あとひとつだけ
君に話さなきゃならないことがあったんだ

君は、今朝。。。
自分が交通事故にあったこと
覚えているかなぁ。。。

普通はあの時
天国へ行くはずだったんだけどね

君は。。。
まだ会社に行きたかったんだね

MB900295352.JPG

もちろんわかるよ。。。
僕もそうだったから

あらら。。。
泣き出しちゃったよ

戻ったんだね
事故の記憶が

僕がこんなことを言うのもなんだけど
元気出せよな

ところで。。。

君も一緒に夕焼けでも眺めないか
こちらもそう悪くないさ

あとで君にも霊視能力者リストをあげよう
きっと役に立つと思うよ

MB900157171.JPG

なぁに。。。
気長にやればいい

順番がくるまで。。。

自由で。。。気ままで。。。気楽にね

           
          おしまい

にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ


nice!(3)  コメント(8)  トラックバック(0) 
共通テーマ:
前の10件 | - 小さなお話 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。